Firestone

花より男子の二次小説です

ご挨拶 & パスワードについて

本サイトに訪問いただきありがとうございます。

「花/よ/り/男/子」の二次創作です。

CPはメインつかつくですが、そのうち類つく、総つく、あきつくも書いていきたいと思っております。

こちらに掲載している文章は、原作者様、出版者様には一切関係ございません。

普段日本語を書く機会が少ないため、誤字脱字や不自然な言い回しなど目障りな点が多々あると思いますが、優しい目で見ていただければ幸いです。

あくまでも素人の趣味で始めたものですので、気に入らない点などあると思いますが、その場合は閲覧をご遠慮ください。
誹謗・中傷・批判等は一切受け付けておりませんので、該当するコメントは削除させていただきます。返信も致しません。

大変恐縮ながら、あらかじめご了承いただければ幸いです。


<パスワードについて>

大人の表現がある記事についてはパスワードを設定しております。

パスワード入力の画面にある2つの質問のご回答をパスワードにしております。花男がお好きな方はすぐに分かる内容だと思います。

なお、パスワードについてはコメントよりお問い合わせいただいてもご回答しかねますことをご了承ください。




riina

Euphoria 15

どうやって帰ってきたのか。


気がつけば、大学に入って使っていた道明寺が保有するマンションではなく、久しぶりに邸に戻っていた。



父も母も、姉もいない、そしてつくしがいなくなった邸へ。

司が戻ってくることを想定していなかったからか、出迎える人間も、働いてる人間も少なかった。

そして恐ろしいくらい静かだった。

俺が邸に寄り付かなくなってから、つくしは一人でこの静寂に耐えていたのか。

誰も味方のいない邸で、暗闇に溶け込むように気配を消してくらすつくしの幻影を見た気がした。


長らく留守にしていた自室に戻ると、テーブルに1通の手紙が置いてある。

司は立ったまま急いで手紙を手にする。

つくしの字だ

バランスの良い、凛とした文字

中を読むのが怖い
知りたくないことが書かれているかも知らない

だが、先ほどの類の堂々とした姿を思い出す。

つくしへの思いを隠さずに、つくしのために動く類

その姿が眩しく、そして気がおかしくなりそうなほど嫉妬した。

つくしは俺のものだ
俺の知らないところでつくしと会うな、話すな
つくしの目に映るのは、つくしの口で名を呼ばれるのは自分だけで良い


類が羨ましかった


誰かの隣にいるつくしの幸せを祈れるような気持ちになれなかった。

出来ることなら、つくしの側にいたい。

気持ちを伝えられなくても。

たとえ、つくしは自分のことを「兄」としか見てくても、それが当たり前なのだ

つくしがこの邸に連れて来られた日から、自分は「兄」としての役割を与えられた。

つくしを「妹」と見れなくなったのは、つくしのせいではない。

司の問題だのだ

そして、、、


こんな地獄を味わうのは自分だけで良い。

司は、机の上に置かれた手紙を、そっと傷つけないように開く。


『司へ

ちゃんとご飯食べて、温かい格好でしっかり眠ってください。


お元気で。

つくし』


昔から変わらない言葉。

ちゃんとご飯食べなよ

寝るんなら自分の部屋で寝なよ、疲れ取れないよ

そんな薄着だと風邪引いちゃうよ


司の体の心配ばかりしていたつくし。


日本を経つ前に俺に伝えたかったことはなんなんだよ

手紙に書かれていないつくしの気持ちを知りたかった。

 

司はその場に崩れ落ちると、押し寄せる喪失感に立ち上がれなくなった。



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Euphoria 14



類には、つくしの気持ちが分かっているのだろうか。

そういえば高等部のとき、つくしが類のことを「ソウルメイト」と言ったことがある。

類が何を感じているのか不思議とわかるのだと。

類にもつくしの気持ちがわかるのかもしれない。

司が知りたくて、だが怖くて、目を逸らしているものが。

「つくしは知ってんのか、お前がやろうとしてること」

類は首を横に振る。

「まだ言ってない。今話しても混乱するだけだろうしね」

すでに炭酸の抜けたコーラを口にした後話を続ける。

「まずは実母を探す。

見つかったらつくしの籍を戻す。きっと三条あたりに頼めばバックアップしてくれるよ。

三条のじいさんが表にでたら、お前んとのおじさんもおばさんも文句言えないだろ」

皇族とも血縁がある三条家の現当主である桜子の祖父は、政界にも財界にもまだまだ顔が聞く。

今は米国に拠点を置く道明寺も、日本でビジネスを行う以上三条家に立て付くことはできない。

そして亡き息子夫婦の忘形見である桜子に甘いことも有名であった。

桜子の頼みなら断れない。

類の勝算はそこにあった。

だからこそ、つくしのホームステイ先に桜子の祖父の親しい友人を手配した。

そこまで考えていたとは。


「でもまだ外堀は完璧には埋まってない。

お前のとこに気づかれてつくしが物理的に邸に閉じ込められたりしたら流石に手出しできなくなるからさ、留学はちょうど良かったんだよ。

日本を離れる口実に。

だけど、つくしはきっと留学期間が終わっても日本に戻るつもりはないと思う」

「は、お前何言ってんだ?」

つくしの留学期間は1年の予定だった。

司はそう認識していた。

「つくしはお前と話そうとしてたはずだよ。

でもお前はつくしに向き合わなかった」

つくしのことを避けてもうどのくらいになるのか。

近づけば気持ちが抑えられなくなるかもしてない、そうすれば自分の気持ちがつくしに気づかれてしまうかもしれない。

怖かった

つくしに拒絶されるのが

もう二度と自分に微笑んでくれなくなるのが

だから自分から距離を置いた。


その間につくしが何を何を考えているのか、何を伝えたかったのか見失ってしまった。

司は頭を抱えて項垂れる。

つくしへの気持ちを堂々と口にし、つくしの幸せのために尽力する親友を前にし、自分の幼さが死ぬほど恥ずかしかった。

俺はまだガキのままだ。


自分の気持ちにさえ向き合う勇気もなく、つくしを思い続ける覚悟も中途半端だった。

「お前んとこのおじさんの20年前の交友関係を今探ってる。

お前にとってはあんま聞きたい話じゃないだろうけどさ。

それと、つくしの道明寺に引き取られる前の足取りも探してる。

あきらのルート使わせてもらってるからそんなに時間は掛かんないと思うけど」


あきらの家の美作商事は戦前から諜報活動に長けている。

美作のルートで手に入らない情報のほうが少ない。

「司、お前に協力してほしいのはさ、道明寺サイドで何か動きがあったら知らせてほしい。

なんでもいいから。

俺からお願いしたいのはそれだけ」




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Euphoria 13


司は、類の質問の真意を探ろうとする。

「母親って、、、」

「お前んとこのおばさんじゃなくて、つくしの生みの親」

「いや、、、」

つくしが楓から生まれてない以上、実母がいるはずだ。

だが、今までつくしからも楓からも一度も実母については何も語られていないことに司は初めて気がついた。

「俺は何も聞いことがない」

「そうか、、、

つくしから小さい時どこに住んでたとか、誰と住んでたとかは?」

司は幼い時の記憶を振り返る。

つくしの口から、道明寺の邸に来る前のことを聞いたことはなかったはずだ。

今思うと、あの年頃にしては不自然に、母親を恋しがることもなかった。

「たぶん、口止めされてたんだ思う。

俺が聞いてもつくしはそんな昔のこと覚えてないって言うんだ。

あの当時のつくしが、断片的な記憶もないなんて不自然だろ。」

あの当時、つくしは6歳だった。
何も覚えてないと言うには無理がある。


そういえば、、、

「何か思い出したことがあったらなんでもいいから教えて」

「いや、、、ガキのころから寝言で何回か同じ名前を口にしたことがあった気がする、、、」

幼い頃つくしは何度が体調を崩したことがあった。

普段は別の部屋で寝ていた司とつくしだったが、つくしが寝込んでるときは毎回司が夜通し付き添った。

あまりに苦しそうで、このままつくしが死ぬのではないかと不安で仕方がなかった。

そんな時、魘されたつくしの口から何度が出た名前、、、

「たしかさっちゃんっとか、そんなんだった気がする」

「名前ってことは、母親の名前じゃなさそうだね。

でも意識が混濁してるときに呼ぶってことは、つくしは道明寺に引き取られるまでその人と住んでた可能性もあるってことか」

類はひとりごとのように呟く。

「なあ、今更なんでつくしの母親を探す必要があんだよ」

話が見えない。

だが、類が無駄話をするとも思えない。
唐突な類の質問の背景がわからなかった。


「俺さ、つくしに救われたんだよ」

「は?」

「静を追いかけてパリに行ったのは衝動的でさ。あと先なんて考えてなくて。

ただ、静と離れてると寂しいし会いたいし、ずっと一緒にいたら幸せだと思ってたんだよね。

んで、静のフラットに一緒に住んで、毎日顔合わせて、1ヶ月、2ヶ月、時間が経てば経つほど違和感が出てきて。

会えない寂しさがなくなっただけで、一緒にいて幸せとか、ずっと一緒にいたいとか、なんていうかさ、そういう気持ちとは違ってて。


でもそんな状況をうまく整理できてなくて。

ただただしんどくて、無気力で、外にも出れなくて。

一日中ずっとベッドに横になってた。

きっと静もなんで俺が塞ぎ込んでんだか分かんなかったんだと思う。

そんな時つくしがいきなりパリに来てさ、卒業旅行だって言って。」

つくしが高等部卒業の後数週間ヨーロッパに旅行に行っていたのは知っていた。

だが、類を訪ねていたのは初耳だった。

「パリに来た後もつくしとは電話とかメールしてたんだよ。あいつのこと心配だったし。

でもさ、すっげーしんどい時にいきなり目の前に現れてハグされた時にさ、初めて分かったんだよ。

ああ、俺が好きなのは静じゃなくてつくしだって」


類の口からつくしへの気持ちを聞かされたのは初めてだった。

「無理やり外に連れ出されてさ。

川沿い歩きながらつくしと話して気づいたんだよ。

静は俺にとって母親とか姉とか、家族なんだって。

離れてると寂しいし、ずっと一緒にいたいけど、それで満たされることはないんだよ。

俺だけを見てほしい、独り占めしたい、抱きしめたい、キスしたい、その対象は静じゃなくてつくしだった。

つくしのこと、妹みたいだからほっとけないって思ってたけど、そうじゃなかった。

俺のためにパリまで来て、心配してくれて死ぬほど嬉しかった。

あのままパリにいたらきっと静のことも嫌いになっただろうし、自暴自棄になってロクでもないことになったんだろうなって、今でも思うよ。

でもあの時の俺は気づかなかった、わかんなかったことを、つくしだけは気づいてくれた。

だから、静のことも、自分ことも憎まずに済んだんだ。

あの時決めたんだ。

俺はつくしの幸せのためならなんでもしようって。

つくしの笑ってる顔が見たいって。」

「お前、本気なんだよな」

類の口から発せられる言葉に、類の口から初めて聞いたつくしへの気持ちに、司はそう返すのが精一杯だった。

「冗談でお前にこんな話しないよ」

そんなことは司もわかっていた、類が冗談を言っているのではないと。

だが、まだ最初の疑問への回答は得られてない。

「それは、つくしの喜ぶ顔を見たいから実の母親に合わせてやりたいってことなのか」

今までの会話から司は自分の考えを口にする。

「嫌、今更実の母親に会ったところでつくしが喜ぶ展開にはならないと思う。

つくしが道明寺にきて何年?」

つくしが邸に連れて来られたのは6歳の時だった。

「13年だ」

「13年前、もしかしたらそれよりもっと前に幼いつくしを手放してそれから一度もあってない。

実母が望まなかったのか、道明寺が禁止したのかはわからないけどどっちにしても今再会してもお互いが喜ぶ状況にはならないんじゃない?」

「じゃあどうして、、、」

「つくしがさ、このまま道明寺にいるってことは、家が決めた相手と結婚させられて、相手の家の利用価値がなくなれば離婚させられて、後継が必要なれば子供を望まれて、そういう人生を歩むってことなんだよ。

俺たちと同じ、いや、確実に俺たち以上に家の駒として使われる。

だからつくしは『戸籍上』、道明寺の子供に迎えられたんじゃないのか?」

そうだ、父も母も、つくしを我が子だと思って扱ってはいない。

実子である椿や司とは明確な区別を行なっている。

年に一度の食事会もそう、親族の集まりもそう。つくしが参加することはない。

『道明寺家の娘』

それだけがつくしに望まれる価値だから。

ようやく類の真意が見えてきた。

「つくしを実母の籍に戻すのか?」

司の問いに類は肯く。

「道明寺じゃないつくしに価値を見出すものは少ない、だろ」

つくしの価値は道明寺の娘であることではない。

だからこそ、つくしの自由を妨げる、足枷になっているものを外したい。

ただの「つくし」として暮らせるようにしてあげたい。

だがそれは、道明寺の婚姻関係を用いた外交政策に影響を及ぼす。

父と母が、つくしが籍を出ることを簡単に容認するとは思えない。

「でも、お前との縁談の話が出てるなら、なんでわざわざ道明寺にケンカ売るような真似すんだよ。」

考えたくないが、類と結婚すれば少なくともつくしは今より自由になるはずだ。配偶者になる類がそれを望み、許す限り。

そして何より、類の気持ちは先ほど明らかになった。

つくしが好きだと。

「つくしと結婚できても、それがつくしの意思じゃなかったら意味がない。

俺が好きなのも、手に入れたいのも『道明寺つくし』じゃないんだよ。

つくしの気持ちが俺にないんだったら、結婚してもお互い苦しいだけだ」




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Euphoria 12


大音量の音楽の中、踊る人間をかき分けて進むとカウンターに目当ての人間が座っていた。

「お客様、何になさいます?」

スツールに腰を下ろすとともにバーテンが尋ねる。

こんなバカ騒ぎを許している一方、スタッフの教育は行き届いているようだ。

さすが、極限られた人間しか入ることが許されていない会員制のクラブと言うべきか。

「コーラ」

「飲まねえなら帰れよ」

類が注文すると同時に隣から突っ込みが入る。

「俺、飲みにきたわけじゃないもん。

司こそ毎晩そんな強い酒飲んでたら体壊すんじゃない?」

隣に座る司のグラスには、琥珀色の液体が美しくカットされた氷と共に注がれていた。

「じゃあ帰れよ」

そういうとグラスの中身を乱暴に飲み干す。

「司と話をしたらすぐ帰るよ。
こんな空気悪いとこにいたら具合が悪くなる」

類の言葉に司は眉を上げる。

「今日、なんで来なかったの?」

「なんのことだよ」

「つくしの見送りだよ。あきらがわざわざ教えたんだろ。」

「ガキじゃあるまいし、わざわざちょっと海外に行くくらいで家族が見送りにいくのもウゼーだろ」

「ちょっとじゃないよ」

「は?」

「つくし、たぶん日本に戻る気はないよ」

司はそこで初めて類の顔を見た。


淡々とした口調とは異なり、類の表情は硬い。

こんな表情をするときは大体激しく怒っているときだと付き合いの長い司には伝わる。

「なんでつくしと話し合わなかった?

あいつは何度もお前と話そうとしたはずだ。

それをことごとく逃げて、避けて、こんなとこで酒飲んで。

それでお前は満足か?」

「、、、せえ、、、」

「何?」

「うるせえよ。お前に何の関係があるんだよ!」

「関係ないことはない。

お前と俺はガキのころからダチだ。

それにつくしは俺にとっても大事な奴だ。」

「だから何だよ!」

「お前、俺とつくしに婚約の話が出てたの気付いてたか?」

司の顔を見て、この話があえて司の耳に入ってなかったことを類は確信した。


「道明寺と大河原の閨閥による提携が難しいから、花沢とのルートを探ってる。

花沢だけじゃない、他にもいくつか候補に上がってる。

分かるよな。

お前が大河原との結婚を渋ってるから、つくしに白羽の矢がだった。

つくしが、お前らの親が決めたことに逆らえると思うか?

だから俺が留学を進めたんだ。

時間稼ぎのために。」



二人の間に重い沈黙が横たわる。

「ねえ、男同士で飲んでないで一緒に踊ろうよ」

二人の間に、派手に体を露出させた女性が割り込んでくる。

ここは元来そういう場所だ。

一夜限りの相手を探す場所。

同性同士でいるということは、今夜寝る相手をまだ探しているということ。

「うそ、めっちゃかっこいいじゃん。あたしの友達もいるから4人でやってもいいよ」

類の腕に自分の腕を絡ませて強調した胸にあてようとする。

「触んないで。それにあんたくさい。あっちいって」

「え?」

今まで断られるということを知らないからか、類の美しい顔から発せられた言葉が彼女の中には入っていかなかったようだ。

だが、優秀なスタッフはすぐに近づいてくると女性を遠ざける。

「え、何?なんで?」

そう言いながら店の外へと連れて行かれる。

「司もいい加減逃げるのやめな。こんなとこにきて適当な女と寝て、それでスッキリしたことがあった?」

何も答えない司に類はため息をつく。


「別にお前がいいなら、俺はお前のことには口を出さない。そのかわりつくしのために力を貸してほしい。

司、つくしの母親について何か知ってる?」




少しストックが出来たので、これから毎日更新する予定です。

まだ「起」の部分ですが引き続きお付き合い頂ければ幸いです。




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Euphoria 11


「わざわざ見送りなんていらないのに」

「そんなわけ行かないでしょ。

それに俺がパリに行く時もつくし見送りに来てくれたしね」

「あのときは類の見送りじゃなくて静さんの見送りだったんだけどね。急に一緒にいっちゃったからびっくりしたよ」

笑いながら話す類とつくしを、あきらと総二郎は驚いた目でみる。

「静の話しって類にとって地雷じゃなかったのかよ」

静と破局し傷心のまま類が帰国したと思っています二人は、普通に静のことを話題にするつくしと類の会話に衝撃をうける。

「昔から、宇宙人みたいに何考えてるかわかねーと思ってたけど相変わらずだな、あいつは」

あたりをキョロキョロ眺めながらあきらは答える。

「お前、さっきから何探してんだよ」

「あきら、つくしの見送りの時まで人妻さがそうとすんのやめなよ。

そんなのはつくしが搭乗してからにしなよ」

「おまえら、俺をなんだと思ってんだよ!

こんな時にナンパするかよ!」

あきらが怒りながら抗議すると、つくしは類と総二郎とともにケラケラ笑っている。

「そろそろあたし行くね。わざわざ見送りに来てくれてありがとう。

イギリス来るときは教えてね」

挨拶して立ち去ろうとするつくしを、類が手を引き抱きしめる。


「無理しないように、って言ってもするんだろうけどさ。

覚えておいて、俺はつくしが呼んだらいつでも駆けつけるから。」

「ありがと、類」

そう言って再び別れの挨拶をすると、つくしは後ろを振り返らずに手荷物検査へ進んでいった。

「で、あきらは何を探してたの」

つくしの後ろ姿が見えなくなるまで見送りをしながら類が隣に立つあきらに尋ねる。

「いや、余計な世話だって分かってるんだけどさ、司にも見送り声かけてたんだよ。

あいつんとこプライベートジェットあるとはいえ今までみたいに気軽に会えるわけじゃねーじゃん。

旅立つ時くらいちゃんと見送ってやりてーと思ってさ」

昔から4人のまとめ役だったあきらならではの気遣いだった。

「でも司来なかったな。お前、つくしちゃんが留学することも司に話したんだろ?」

「俺が伝える前に知ってたけどな。

前はあんなに分かりやすかったのに、最近は何考えてんだかさっぱり分かんねーな」

「人はそんな簡単に変わんないよ。

あいつが考えてることなんて昔から変わってないよ」


つくしの姿が見えなくなる前、最後に一度振り返ったため皆手を振ると、つくしは「もうかえっていいよ」と大きく口を動かしながら大きく手を振り返した後でイミグレへと入っていった。


「あきらと総二郎に聞きたいことあるんだけど」

つくしの姿が見えなくなったところで類が切り出すと、それにかぶせるように

「その前にお前、なんでパリから帰ってきたのかちゃんと説明しろよ!

俺達はてっきり静と別れて帰ってきたんだと思って静の話題に触れないように気ーつけてたんだぞ」

とあきらがずっと思っていた疑問を口に出す。

「えー、そんなこと気にしてたの。あきらはげるよ」

「うるせー、不吉なこというなよ」

「静と別れたのは当たってる。でも別に気まずいわけじゃないし気を使わなくていーよ」

淡々とした類の様子から強がっているわけではないようだ。

そもそも強がる性格でもないが。

「で、俺が聞きたいこと聞いてもいい?」

「なんだよ、お前が質問とか珍しーな」

「二人でしょ、司に変な場所紹介したの」

「変な場所って言い方気を付けろよ。別に変な場所じゃねーよ。」

「なんでもいいけど、どこか教えてくれる?」

先ほどまでつくしを見送っていたのとは別人のように冷たい表情で類は尋ねた。




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Euphoria 10

「なあ、情報多すぎんだけど、類とつくしちゃんは付き合ってんのか?」

あきらは1番大きな疑問を口にする。

「お前、あれが付き合ってるように見えんのか?」

聞いておきながら、あきらは首を横に振る。

二人の空気は恋人特有の甘さがない。どちらかというと仲の良い兄妹だ。

「付き合ってるとしたら色気なさすぎだろ」

「だな」

「っていうか、つくしちゃんいつ留学行くなんて決めたんだよ」

総二郎は桜子に尋ねる。

「先輩は結構前から考えてたみたいですよ」

「にしても、なんで道明寺の本邸があるニューヨークじゃねえんだ。

司もあっちの大学に行く話もあったじゃねーかよ。なんで道明寺の令嬢がニューヨークじゃなくてイギリスに行くんだよ」

総二郎は言いながらも、なぜ自分がこんなに苛立ちを感じているのか分かっていた。

つくしを迎えたにも関わらず、正式に道明寺家の子供として扱わないその態度がつくしを長年に渡って危うい立場に置いている。

道明寺家の現当主である司とつくしの父とは母はニューヨークに拠点を置いている。

司も大学創業とともにニューヨークに渡る予定だ。姉の椿は結婚しロサンゼルス在住だが頻繁にニューヨークの本邸に里帰りしているし、グループ会社の一つ、ホテル事業の責任者を務めている。

つくしだけがいつも家族の輪から外れている。

「アメリカにも行こうと思えばいけたんです。

ご両親は先輩の進路に関しては放任なので、先輩が希望すれば反対はされなかったんじゃないかと。

でもアメリカ以外を、イギリスを強く希望されたのは先輩の方なんです。」

桜子は次の言葉をいうか少し悩んだのか間が開く。

「多分、先輩疲れたんだと思います。

『道明寺』の名前がついて回ることに。

だからあえて『道明寺』の影響力の少ないイギリスを選択されたんだと思います。」

多分、司と距離を置こうとしている。

桜子はそう思っていたが、司の友人である総二郎とあきらの前では口には出さなかった。

先に距離を置いたのは司だった。

あれほどつくしの側から離れなかったのに、高等部から大学に上がる時期司は変わった。そして荒れた。

タチのよくない場所へ出入りしているとも聞く。

それでも

その言動の中にはわずかにだが司の本心が透けているよう気がしていた。

つくしに関心が、敵意が向かないようにしている。


司は当初桜子がつくしの側にいくことを認めなかった。

いや、桜子だけでなく男女問わず、自分の親友たちでさえ自分以外こそものがつくしと親しくするのを許さなかった。

だが、司がつくしから距離を置くと同時に、桜子や類がつくしの側にいるのを黙認した。

単につくしへの関心が薄れただけではないのか。

その仮定は、ふとした瞬間司がつくしを見つめる視線により打ち消される。


まだ炎は灯ったままだ。


だが、それに気づいているのはおそらく自分と類、そしてつくしだけだと桜子は思っている。

だからこそつくしには受け止めきれなかったのではないか。

つくしに対して妹以上の感情をもつ司の気持ちが。

つくしは妾腹というその生い立ちから潔癖気味な倫理観を持っている。

そのつくしが受け入れられるわけがない。だからこそ、すべてに気づかないふりをしたまま、司から離れるのではないか。

先輩はもう日本に帰ってこないのかもしれない。

桜子はそんな予感を抱く。

桜の優先順位は決まっていた

つくしの幸せ

きっと、二人は離れたほうがいい

だからこそ留学を後押しした

先輩には、後ろめたさを抱くことなく明るい場所で笑っていて欲しい。

桜子はそう願う。



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Euphoria 9


「そういえばつくしちゃん、司は最近何してんだ?学校にも顔出さねーけど」

総二郎の質問に桜子はハッと現実に引き戻される。

「さあ、寝てんじゃないの」

困った顔のつくしの横にいる類が代わりに答える。

「お前に聞いたんじゃねーよ」

「常に寝てるのはお前だろーが」

あきらと総二郎は口々に突っ込みを入れる。

「そうだ先輩。例の件でお話ししたくて」

類の意図を汲み取った桜子はつくしの方へ歩いていくとあえて話を逸らした。


資料をテーブルに広げながら話を進める。


「こちらの方、前にもお伝えした通り祖父が留学したときのホストファミリーのご子息なのですが、今は子供達も独り立ちし余暇を持て余しているそうで、先輩のことお話ししたら大歓迎とのことでしたわ」

クラシカルだが手入れの行き届いた大邸宅の写真、品の良い初老夫婦の写真などの書類がテーブルに並ぶ。

「先方にもう聞いてくれたんだね、桜子。
ありがとう。助かるよ」

そう言ってつくしが写真を手に取る前に総二郎が書類を手にする。

「Sir Harry John Somerset、って貴族だろ。なんだこれ」

「何って何?」

「お前、イギリスに行くのか?」

「先輩、交換留学のプログラムに参加される件、西門さんと美作さんにお話しされてないんですの?」

総二郎の横で同じ反応を見せるあきらを見て桜子がつくしに訪ねる。

「交換留学って、いつからだ?」

「どこの学校に行くんだ?」

「期間はどれくらいいくんだ?」

「ここにホームステイすんのか?なんで一人暮らししねーんだ?」

矢継ぎ早に質問を投げかける二人につくしは苦笑いする。

「二人ともそんな質問したら答えられないよ」

つくしの返答に総二郎とあきらは我に帰る。

「わりい、びっくりしてさ」

「でも急に留学なんかどうしたんだよ」

あきらの質問につくしは淡々と答える。

「一度日本から離れてみたかったんだよ。

誰もあたしを知らないところで生活してみたくて」


日本に、英徳にいる限り、つくしには「道明寺」の看板が付き纏う。

その上つくしにはその出自により常に悪意にも晒されている。心ないことをわざわざ言いに来る人間も少なくない。


その気持ちは痛いほど分かる。


「でも司は知ってんのか?あいつお前が留学行くなんてよく許可したな」

常につくしの側に番犬のようにつきそう幼馴染の姿が焼きついている総二郎の言葉につくしの顔が曇る。

「別に司の許可が必要なわけじゃないし。

それに話そうにも顔合わせないから言う暇もないし」

つくしの声があまりに暗く、質問をした総二郎は自分が地雷を踏んだことに気がついた。

「まあ、あいつは保護者じゃないしな」

「で、いつ出発するか決まった?」

成り行きを静観していた類が急に言葉を発する。

「うん、来月の頭にしたよ。

授業始まる前に準備しときたいし早めに行こうと思って」

「そっか。じゃあ俺も来月イギリスに遊びに行こうかな」

「そんな暇あるならちゃんと授業に出なさいよ」

「出てるじゃん、一緒に」

「あたしの授業にでても意味ないでしょ。自分の授業にでなよ」

「だって一人で出てもつまんないじゃん」

「一人でつまんないって遊びじゃないんだから、、、」

「だってつくしの顔面白いんだもん。」

「ちょっと、授業中何みてんのよ。あたしの顔じゃなくて黒板見なさいよ」

二人が話している横で総二郎とあきらは目線を合わせる。

「まあ先輩、花沢さんが授業についてくるのもあとわずかですから」

「そうだね、ってごめん。

わざわざ時間とってくれたのに。

後ほど秘書の方から桜子のお婆さまとサマセット卿にご連絡行くと思うから、、、」

「そんな、先輩のためですもの。礼には及びませんわ。

それに学校の指定する寮より私の存じ上げている方のところに滞在されるほうが安心できますし。

落ち着いたら遊びに行かせてくださいね。」

「もちろんだよ、桜子ならいつでも大歓迎だよ」

「じゃあ俺もつくしと同じフライトで遊びに行こうかな」

「類、それは遊びに行くって言わない。

っていうか英徳戻ったばかりなんだからちゃんと授業でなさいよ」

「はあ、せっかくつくしにいつでも会えるようになったのにまた離れるなんてね」

「ふふっ、確かに。でもいつでも連絡取れるよ、今までみたいに。

ってあたし留学の事前説明会があるんだった!急がなきゃ。

桜子ありがとう、また連絡するね。西門さんも美作さんもまたね」

そういってつくしが席を立つと類も一緒に席を立つ。

「類は自分の授業でなよ」

「つくしを説明会に送ってってからでるよ」

「学内なんだから付き添いいらないって」

「そんなこと言って迷子になっても知らないよ」

「さすがにならないよ」

「そんなこと言ってこないだだってさ、、、」

二人はワイワイと話しながら部屋を出て行った。



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Euphoria 8


『つくしーーー!』

一人歩くつくしに猛烈な勢いで突進してきた人物を見て二人の顔は歪む。

「おい、あれ大河原滋だろ?」

「ああ、司の婚約者のな」

「あいつ学校違うだろ。なんでしょっちゅううちにいるんだ?」

「将を射んと欲すれば先ずなんとやら、ですわ」

突然ラウンジに現れた桜子の声にあきらと総二郎は振り返る。

「お前、なんでここに入ってくるんだよ」

過去に桜子と色々あった総二郎とあきらはどうしても桜子に対して疑いの目を向けてしまう。

たとえ彼女がつくしを慕っていると言っても、その行動に裏があるのではないかとどうしても疑ってしまう。

「あら、先輩と待ち合わせしていたのですが、、、足止めされてるようで」

一方的に滋がつくしに話しかける様子を、窓を隔てて桜子は鋭い目線で眺める。

ラウンジの窓はマジックミラーとなっており、外からは中の様子を見ることはできない。

つくしに見られる可能性がないと分かっているからか、桜子の表情はゾッとするほど冷たい。

「道明寺さんに取り付くしまがないからって、先輩の迷惑も考えずに連日押しかけるとは、評判に違わず大河原のご令嬢はおてんばのようですわね」

桜子の発言に二人は目を合わせる。

「お前、どこまで知ってるんだよ」

「あら、道明寺さんと大河原ご令嬢の婚約が発表された後も、熱をあげてるのは滋さんだけ。道明寺さんは相手にせず夜な夜な遊び歩いていることくらい、社交界に身を置くものは皆ご存知なのでは?」

ふんっと鼻を鳴らしながら答える。

「それより、そろそろ先輩がおかわいそうなので助けに、、、」

と桜子がラウンジを出て行こうとすると、滋に捕まったままのつくしの手をすたすたと歩いてきた男性が掴みそのまま引きずっていく。

呆気にとられた滋はしばらくぽかんとしていたが、SPらしき黒ずくめの集団がすぐにやってきて連れ去られてしまった。

目の前からつくしが消えてまもなくラウンジのドアが開く。

「類、お前返信くらいしろよ!」

つくしと共に現れたのは、先ほどから連絡つかない親友だった。

「どうせ大した用なんてないでしょ」

そういうとつくしの手を掴んだまま共にソファに座る。

「ちょっと類、なんで急に来て手を引っ張るのよ!滋さんに失礼じゃないの!」

力ずくで連れてこられたつくしは文句を言うが、類の耳には届いたいない。

「ねえあきら、喉乾いた。俺の分とつくしの分」

「お前、俺はウェイターじゃねえぞ!」

と言いながらあきらは先を経つと先ほどまで炎天下で滋に捕まっていたつくしにアイスティーを、類にアイス抹茶ラテを持ってくる。

「ほらつくしちゃん。砂糖入れといたからしっかり飲んどけ。熱中症になるぞ」

妹のいるあきらは自然体でつくしにも兄の様に世話を焼く。

「あきら、ストローも」

「ストローくらい自分でとれよ!」

と言いながらもストローを投げつけるあきらは根からの世話焼き体質が抜けない。

「桜子、待たせてごめんね」

ラウンジに桜子もいることに気がつくとつくしはすぐに謝罪を口にする。後輩であっても対等に扱ってくれる、それら桜子がつくしを慕う一つの理由でもある。

「私は涼しい室内にいたので大したことありません。それより先輩こそ、炎天下の中長いこと捕まって大変でしたわね」

「ううん。滋さん、この間ドバイに行ってたみたいでわざわざお土産もってきてくれてたの」

「土産?」

思わぬ答えに総二郎の口から質問があがる。

「そう。これ、あっちで有名なドライフルーツなんだって。栄養価が高いから夏バテにちょうどいいって思って買ってきてくれたんだって」

そう言って見せた袋の中には透明なケースの中よく分からないものがびっしり詰められていた。

「うわっ、なんだそれ!」

潔癖ぎみのあきらは未知の物体に思わず声を上げる。

「デーツですわ。ナツメヤシを干したもので栄養価も高いし美容にも良いんですわよ」

そういった桜子には、つくしが手にするのが王室御用達ブランドの中でも、中々手に入らないものだと知っている。

これを手にできるのは中東に強い大河原だからこそ。そんな品を公式ルートではなく非公式ななつくしに手渡しする意味とは。

一目で高価と分かるものではなく、食べ物にすることでつくしが断り難いことも考えた上での選択なのか。

つくしの身を案じ、桜子は思案する。

単に司へアプローチする踏み台につくしを使おうとするのなら、桜子としては徹底的に排除するだけだ。大河原が道明寺と並ぶ大企業であっても、日本では三条家のほうが格は上である。手出しはできない。

だが、滋からはそんな腹黒さは見えないため、対応に苦慮している。


余りに桜子がやり過ぎて、本当に司と滋が結婚した際つくしに気まずい思いはさせたくない。

桜子が考えている間、冷たい飲み物を飲んで一息ついたのか類は暇そうしながらもつくしの横に座っている。

わからないと言えば類もだ。

急にパリから帰って以降、司が学校に来ない代わりに、常につくしの側にいる。

かと言って二人の間に恋人特有の甘い雰囲気はない。

まるで本当の兄妹みたい、、、

司とつくしの関係とはまるで正反対だ。


司はつくしのことを妹と思っていない。

当初心を寄せていた司のことを誰よりも見ていたからこそ桜子は気づいた。

私は道明寺さんの横には立てない。

道明寺さんが見ているのは、心を寄せるのは先輩にだけ。

つくしの友人でもある自分にできるのは、司のつくしに対する気持ちに気づかないふりをすることだけ。




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Euphoria 7



「ったくあいつはフランスにいるのか日本にいるのか分かんなーな」

あきらが携帯を手にぼやく。

「類か?」

総二郎の問いかけにあきらはため息で答える。

「いきなりフランスに留学に行ったと思ったら突然英徳に復学するなんて、無茶苦茶というかあいつらしいというか」

「お前のとこにも類から事前に連絡なかったのか?」

「あるわけねーだろ。

いきなりラウンジ来たらあいつが寝てんだぞ。

一時帰国かって行ったらフランスには戻らないって意味わかんねーよ」

「まあ、あいつは昔からそんなとこあるからな」

「お前もなんで類が急に帰ってきたか知ってるか?」

あきらの質問に総二郎は首をふる。

「俺が知るかよ。まあ、静がらみなのは間違いねーだろうけどな」

彼らより2つ上の幼馴染の名前を出す。

藤堂静は大学在学時、親の反対を無視し家を出る形で弁護士を目指すためフランスへと留学していた。

幼少時より静を慕っていた類は高校卒業と同時に総二郎やあきらに何も言わずにフランスへと渡ったため、二人はてっきり類は静とフランスで仲良く暮らしているとばかり思っていた。


それが急に帰国しフランスには戻らないと言うことは、静と破局したと思うのが自然だった。

だが、話を聞こうにも類は高校時代より自由気ままに生活しており連絡が取れない。

たまに大学にも来ているようだが、ラウンジに顔を出すことは稀だ。

「そういえば、司無事に進級できたってな」

学内で見ることがない親友の話題にうつる。

「そりゃそうだろ。

あいつが英徳で進級出来ないんだったらここにいる意味ねーだろ」

富裕層の生徒が大半とはいえ、その実学園運営は高額の授業料ではなく寄付金が大半を占めている。

一流の教授、一流のファシリティ、一流のサービスは道明寺の寄附金なしに成り立たない。

誰もが知る事実だった。

司は授業に一度も出ることなく卒業する権利を保有してるも同然だった。

「にしても、あいつ普段何やってんだ?」

「さあ、寝てんじゃね?」

「類かよ」

そんな雑談をしていると、外を歩いている一人の学生に目が止まる。



「あれ、つくしちゃんじゃん」

あきらの言葉に総二郎も同じ方向を見る。

パリ、ミラノ、NYのランウェイかと思うようなハイブランドの最新ファッションに身を包んだ学生が大半を占める英徳において、明らかに浮いている地味な服装。

いや、着ている素材自体は一流品なのだろうが、Tシャツやカットソーにデニム、スニーカーと機構性しか考えていないと思われる格好をしているのはキャンパス内でも逆の意味で浮いている。

「あれで道明寺のご令嬢って言われても信じられるか?」

総二郎の言葉にあきらは首を横に振る。

「まあ、つくしちゃんの場合はあえてそう見られないようにしてるように見えるがな」

自身も妹をもつあきらはそう付け加える。


彼女の複雑な家庭環境を知るものとしては、ひたすら女性らしさ、華やかさを排除しようとするつくしの姿から痛ましさすら感じてしまう。


つくしは常に学内では孤立していた。


かつて、それは常に司が側にいて、だれも寄せ付けないようにしていたから。

だが、高等部のある日を境に司とつくしの間に距離ができた。


今までが近すぎたのだ、これくらいの距離感が当たり前なのかもしれない、兄妹としては。

司とつくしの関係性の変化を、二人はそう捉えていた。



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