Firestone

花より男子の二次小説です

ご挨拶 & パスワードについて

本サイトに訪問いただきありがとうございます。

「花/よ/り/男/子」の二次創作です。

CPはメインつかつくですが、そのうち類つく、総つく、あきつくも書いていきたいと思っております。

こちらに掲載している文章は、原作者様、出版者様には一切関係ございません。

普段日本語を書く機会が少ないため、誤字脱字や不自然な言い回しなど目障りな点が多々あると思いますが、優しい目で見ていただければ幸いです。

あくまでも素人の趣味で始めたものですので、気に入らない点などあると思いますが、その場合は閲覧をご遠慮ください。
誹謗・中傷・批判等は一切受け付けておりませんので、該当するコメントは削除させていただきます。返信も致しません。

大変恐縮ながら、あらかじめご了承いただければ幸いです。


<パスワードについて>

大人の表現がある記事についてはパスワードを設定しております。

パスワード入力の画面にある2つの質問のご回答をパスワードにしております。花男がお好きな方はすぐに分かる内容だと思います。

なお、パスワードについてはコメントよりお問い合わせいただいてもご回答しかねますことをご了承ください。




riina

Can you keep a secret? 類つく



CPは類×つくしです。




「つくし、今日の夜空いてる?」

他校生である滋が当たり前のように英徳のカフェテリアにいるのもいつもの光景だ。

「ごめん滋さん、今日はちょっと、、、」

つくしはそういうと、斜め右にあるソファで眠っている類のことをちらっと見る。

「えー、今日バイト入ってない日じゃなかった?」

つくしのスケジュールをつくし以上に完璧に把握している者の一人が滋だ。せっかくのバイトがない日、つくしとやりたいことが山の様にある滋は少し不満げに口を尖らせる。

「ごめん、先約が入ってて、、、」

そういってつくしは両手を合わせてごめんのポーズをとるものの、何の予定が入っているかについてははぐらかそうとしている。

「そっかー、先約ならしょうがないか。じゃあさ、次のバイト休みの日は滋ちゃんと遊んでよね!」

あまり裏を読まない滋はすぐに引き下がる一方、あきら、総二郎、そして桜子は静かに視線を交わす。

『俺達には知られたくない予定があるってことか』

『先ほど先輩ちらっと花沢さんのほうを見ましたよね』

『ああ、類がらみなのは間違いないだろう』

3人は無言のまま類へと視線を走らせると、タイミングよく目を開いた類と視線が合いそうになる。

『類をつついても何もでてこねーだろうしな』

『何も出てこないどころか、その後がこえーぞ。きっと俺たちに言うなって牧野に言い含んだのは類だろうしな』

『まあ、先輩があえて花沢さんとの予定を私たちに内緒にする理由はありませんしね』

「じゃあみんな、また明日ねー!」

そういうとつくしはそそくさと帰ろうとするが、先ほどの滋との会話であたふたした余韻か手前にある椅子に勢いよくぶつかってしまう。


ガターン!!!


大きな音が響く前に、つい先ほどまで目を瞑ってソファに横になっていたとは思えない機敏さで類が起き上がり、つくしの腰へと手を回し体を支える。

「ほら、牧野そそっかしいんだからそれ以上体に痣ができないように気を付けないと」

「あっ、類!ありがと」

つくしはへへへっと笑って類を見ると、類もつくしを見つめ微笑み返す。

そしてそのまま二人は自然にカフェテリアを後にした。


「って、まったく自然じゃねーだろ!」

「あの流れを不思議に思わないのは先輩だけでしょうね」

「牧野、あいつ椅子にぶつかったどさくさで俺らのことすっかり忘れたんだろ」

総二郎、桜子、あきらの声に、滋はぱちくりと大きな目を瞬きする。

「ねえねえ、みんな何の話してるの?」

「なんのって、牧野と類に決まってんだろ」

「え、つくしと類くんがどうしたの?」

「お前、今の流れでなんか気づかなかったのかよ」

総二郎はあきれた顔で滋を見る。

「さっきのって、つくしが椅子にぶつかって、類くんが支えてただけでしょ?」

滋の見たそのままを口にする発言に、3人はわざとらしくため息をつく。

「はー、お前それでよく大河原の令嬢やってけてるな」

「そんな、ほめられると照れちゃうな」

へへっと笑う滋に、「褒めてねーよ」とあきらが突っ込みを入れる。

「まあ、滋さんの空気を読まないという特技は女子社会においてはある意味最強なのでよしとしましょう」

桜子が何ら慰めにもならないことをいうが、当の滋は褒められていると思ってうれしそうだ。

「滋さんのために説明しますと、先ほどの先輩、滋さんのお誘いの断り方が不自然でしたでしょ。普段の先輩なら、何の予定があるか別に私たちに隠す必要はありませんもの」

「確かに、いつもつくし都合が悪い時はその理由をちゃんと教えてくれるね」

「牧野断りながら、ちらっと類のほう見てたよな」

「ああ、見てたな」

「なのに花沢さんは寝たふりを決め込んでいたと」

「なんで寝たふりって分かんの?類くんのことだから本当に寝てたんじゃない?」

「本当に寝てたら、牧野が椅子にぶつかった時あんなすぐに反応できねーだろ」

「あいつの寝起きの悪さは天下一品だからな」

「極めつけが、」

桜子の言葉に、あきらと総二郎の声が重なる。


「「「それ以上体に痣ができないように気を付けな」」」


「先輩、完全に花沢さんとやりましたね」

「桜子、お前一応旧華族のお嬢様なんだからそんな直接的な言い方やめろよ」

桜子のダイレクトな物言いを、あきらが諫める。

「でも、美作さんも西門さんもそう思ってますわよね」

涼しい顔をした桜子はティーカップを手にすると、わずかに冷めたファーストフラッシュのダージリンティーを口に運ぶ。

「でもいい方ってもんがあるだろうがよ。古今和歌集みたいな、もっと雅な言い方とかしろよ」

総二郎が皮肉っぽく言うと、桜子はきれいな眉を少し上げ、「そっちのほうがかえっていやらしくないですか、若宗主」と皮肉で返す。

「ちょっとまって、みんな何の話してるのか全く分かんないんだけど」

一人置いてけぼりを食らった滋が慌てて口をはさむ。

「お前はまあ分かんねーままのほうがいいだろ」

「顔に出やすいからな、お前は」

「ちょっと桜子、黙ってないで教えてよ!」

あきらと総二郎のあきれた物言いに、滋は桜子が最後にとりでとばかりに縋りつく。

「別に滋さんにお教えするものやぶさかではないのですが、、、次先輩に会ったときに動揺しないって約束できますか?」

桜子は先ほどまでと打って変わって真剣なトーンで滋に問いかける。

「もし私たちが動揺したり何かネガティブな反応でもすれば、先輩きっとスタート地点に帰っちゃうと思うんですよ。いえ、スタートならまだましで、むしろスタートからはるか彼方に戻ってしまう可能性もありますし。」

桜子の言葉に、滋はしばし考えた後で顔を横に振る。

「うーん、よくわかんないけど、あたしが知ったことでつくしが悲しい気持ちになる可能性が少しでもあるんだったら知らなくていいや」

さっぱりとした顔で宣言すると、「じゃあまた明日ねー」と笑顔で帰っていった。


「まあ、どちらかというと怖えーのは牧野じゃなくて類のほうなんだけどな」

「やっとのことでソールメートから一歩進んだのに、俺たちが茶化したせいで牧野がまた殻に閉じこもったりした日には、あいつ俺たちのことぜってー許さねーだろうしな」

総二郎とあきらは類の反応を想像し、鳥肌をたてる。

「まあ、おめでたいはなしじゃないですか。先輩もようやく大人の階段を登ったということで」

「俺たちのつくしちゃんもとうとう大人になったってよ」

「今日は赤飯を炊いてお祝いだな」

あきらと総二郎がわざとらしく泣きまねをするのを桜子はあえて突っ込まずスルーする。

「まあ、これからが大変でしょうから。だって相手はあの先輩なんですから。」

「それにうるさい小姑もついてるしな」

「あら、そんな方いらっしゃいましたか?」

すっとぼける桜子に総二郎とあきらはわざとらしく目くばせをする。



昨晩眠りが浅かったのだろう。車に乗ったとたん隣から寝息が聞こえてきた。

窓ガラスに頭を寄りかかり、幸せそうな顔で眠っているつくしの肩に手を置くと、類はそっと頭を自分の肩へと寄りかからせる。

「これからはもっと俺に寄りかかってよ」

ようやく手に入れた特等席、友達よりも近い距離。


「後であいつらうるさそうだから俺も寝とくかな」

一人ごちると、肩に感じる幸せな重みを心地よく感じながら、類もそっと目を閉じた。



嘘を隠せない正直な滋ちゃんと、総二郎とあきらをけん制する類くんのお話でした。



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いつも拍手ありがとうございます!


Who do you love? 6 最終話



「空いてる」


つくしの呟きに、エレベーターに向かっていたあきらは足を止める。

つくしが玄関のドアを開くのと同時に、あきらは部屋の中からは死角になるが、すぐにつくしの元へと駆けつけられる場所に身をひそめる。

「後藤くん、なんでいるの?」

つくしの言葉から、部屋の中にいるのが後藤だとわかる。部屋からは騒がしいテレビの音が聞こえてくる。

「なんでって俺は彼氏だろ。お前の部屋にいたって問題ないだろ」

相手はすでに出来上がってるのか、呂律の回らない間の抜けた声をだす。

「問題あるでしょ。なんでうちの鍵を後藤くんが持ってるの?」

「いつまでたってもお前合鍵渡さないから、こないだ作ったんだよ。それより、こんな時間まで何してたんだよ。残業するくらい仕事が忙しいっていうアピールか?」

二人の関係はとうに破綻していたのではないか、会話を聞きながらあきらは考える。後藤からつくしを労わる様子は感じられない。

「ねえ、今日は帰ってくれる?あと鍵も返して」

「さすが給料が上がると態度もでかくなるんだな。腹減ってんだよ、早くなんか作ってくれ」

あまりの態度にあきらは我慢できず部屋に入ろうとするのをつくしは手で止める。

深く呼吸すると、つくしの目に光がやどる。

「いつまでも甘えてんじゃないわよ」

「へっ?」

突然のつくしの言葉に、後藤は間の抜けた声を出す。

「あたしはあんたの母親じゃないの。あんたの自尊心を満たすためにいるんじゃないのよ。今すぐに鍵を置いてうちから出て行って」

「な、な、な、なんだよお前。酔ってんのかよ」

「酔ってんのはあんたでしょう。あたしが辛い時側にいてくれたから、今度は後藤くんが辛い時くらい側にいようって思ってたけど、あたしがバカだった。あんたが必要だったのは家政婦がわりになんでもやってくれる雑用係だったんでしょ。ならお母さんのいる実家に帰りなよ。少なくともあたしはあんたにこれ以上付き合えない」

「お前、黙って聞いてればいい気になりやがって」

奥のリビングからドタドタと玄関に向かってくる足音が聞こえる。つくしの言葉に腹を立てた後藤がつくしに近づいてくる。つくしに危害が加えられる可能性を考えてあきらは動こうとするがそれより早くつくしの体が動く。

ひょいっとつくしが身をかがめるとつくしの頭があった位置に向かってきた拳が対象をなくし空回りする。

あいつ、牧野のこと拳で殴ろうとしやがった!

あきらの怒りが頂点に達すると同時につくしの拳が体勢を崩した後藤の左わき腹に入る。

メキメキ

その勢いのまま後藤は盛大に後ろに倒れる。

「女をぐーで殴ろうとするなんて、そこまで最低な男だったなんて。」

つくしは仁王立ちになり、後藤を見下ろしといる。

出番がなかったあきらは呆然とつくしの背中を見つめる。

そこには、かつて「英徳のジャンヌダルク」と呼ばれ、自分たちに立ち向かってきたつくしの姿が重なる。

ああ、牧野だ。

俺は何を勘違いしてたんだろう。

牧野は男に守ってもらわないと歩けないような女じゃない。自分の足でしっかりと歩く、雑草のように逞しい女だった。

あきらと再会したことで呪縛がとけ、自分らしさを取り戻したつくしはすっきりとした顔をしている。

「それともあたしが後藤くんをダメにしちゃったのかな」

つくしがやればやるほど、後藤は再起するどころかどんどん転がり落ちていった。今ではアル中の一歩手前だ。

「いや、お前のせいじゃない。こういう奴は誰が相手でも最後にはこうなるんだよ。自分で問題を見つめる勇気がない限りは」

「それはあたしもおんなじだね。勇気がなかったから、問題から逃げるために自罰的になっちゃった」

「いや、それは俺のせいでもあるから。でも、もう大丈夫だろ?」

憑き物が落ちたかのようにすっきりとしたつくしの顔を見る。そこには再会した時に感じた影は見られない。

「うん。なんか久しぶりに体が動かしたからかすっきりしちゃった」

「相変わらずキレのいいパンチだったぞ」

「そこ褒められても全くうれしくないんだけど、、、」

つくしがむくれるので、あきらは思わず吹き出してしまう。

「もー笑うなんてひどい!っていうか、これどうしよう?」

玄関の床に伸びたままの後藤をつくしは指差す。

「お前のパンチくらったんだ、しばらく目ーさまさねーだろーな」

「なんで家の玄関で殴っちゃったんだろう?あたし家に入れないじゃない」

つくしは頭を抱えるが、後悔のしどころがポイントがズレていてあきらはますます笑いが止まらない。

どうしよう、呟くつくしを見つめあきらは閃く。

「牧野、ほら、さっき渡した鍵今から使えばいいじゃないか」

「鍵って?」

「俺ん家の鍵。早速役に立つ時が来て嬉しいよ」

そういうとあきらはつくしの肩を抱き、回れ右をしてエレベーターへと向かう。


「後は家の人間がやるから気にすんな」

「えっ、ちょっと待って。後って何?どこに行くの?」

あたふたとするつくしを車に乗せると、あきらはボー然とするつくしの横で秘書に電話をかけ後始末を依頼する。

あきらのSPからの報告とも照らし合わせ、秘書は後藤の処遇に頭を悩ませることになる。あきら様に任せると、牧野様がらみだけに血の雨が降るだろう。その前に適当なところに飛ばさなければ、、、ご機嫌なあきらとは対照的に秘書は眠れない夜を過ごすことになる。


翌朝

何一つ部屋から持ってこれなかったつくしは途方にくれる。

流石に昨日と同じ服を着て会社には行けない。普段薄化粧だからといっても眉毛くらいは書きたい。

まだ眠るあきらの横でブランケットで顔を隠しながらつくしは悶々と考えていると、朝早い時間にも関わらずドアベルがなる。

「もー朝っぱらからなんだよ」

眠っていると思っていたあきらが声を出すのでつくしの心臓は止まるかと思うほどにびっくりする。

あきらは近くにあったバスローブを羽織りリビングに消えたあきらは数分後ベッドルームに戻ってくる。

「牧野、これ」

そういうあきらの両手に紙袋が下げられている。

「それ何?」

「お前の着替とか。今日も会社行くだろ?」

「わっ、ありがと!どーしようかと思ってたんだ。うちから持ってきてくれたの?」

つくしの質問に、あきらはバツの悪そうな顔をする。

「いや、、、これお袋から」

「お袋って、美作さんのお母様?」

「悪かったな、今朝のお前の支度まで気が回らなくて」

「いや、ちょっと待って。なんでお母様から?ってかお母様私がここに泊まったこと知ってるってこと?いやーーーー!!!」

自分の気の回らなさに落ち込むあきらと、あきらの母に知られて死ぬほど恥ずかしいつくし。

部屋からは昨晩の甘い余韻は吹き飛び、カオスとなった。

紙袋の中にはメッセージが入っていた。

『あきらくん!

つくしちゃんを落とすなんてでかしたわ!流石私の息子ね。

そのままつくしちゃんを私の娘にして頂戴♡』


Fin



Who do you love? 5



永遠に続くかと思う沈黙にあきらは耐える。

つくしはあきらと目線が合わないよう、下を見たままだ。

二人で過ごした日々を思い出す。

少しずつ近づいていたはずだった。

見えない亡霊に怯え逃げ出したのは俺だ。

「牧野、たとえ司がお前のことを思い出したとしても、俺はお前の一番近くにいたい。もう一度だけチャンスをくれないか?」

あきらの言葉につくしは顔を上げる。

「もう、あたしのこと置いていかない?」

震える声でつくしは尋ねる。

「ああ、もう絶対に逃げない。ごめんな、俺が自信がないばかりにお前を突き放すようなことして、あげく勝手に戻ってきて。でも約束する、何があってもお前のそばにいる。」

たとえつくしの気持ちが他の誰かにあったとしても。


あきらはつくしの目を見つめる。少しでも想いが伝わるように。

あきらの言葉にうなずいたものの、つくしは口を開いては閉じ、開いては閉じている。

ようやく言葉になったのが、「ちゃんとしてからでいい?」だった。

彼とはまだ付き合っていることになるから、ちゃんと話をしてからじゃないと前に進めない、つくしらしい返事だった。

「もちろん。そんなことなら幾らでも待つよ。でも、相手に話すのにお前一人で大丈夫か?」

「もちろん。ちゃんと話してくるよ」

本当は明日ロンドンに戻る予定だったが、あと2日だけ滞在を延長することにした。

「これ、俺の家だからもし身の危険を感じたり、自分の家に帰り辛かったらいつでもここを使ってくれ」

あきらはそういうと合鍵をつくしに渡す。

「え、実家が都内にあるのになんでマンションがあるの?」

「久しぶりに帰って実家でくつろげると思うか?」

あきらがげんなりというと、久しぶりのあきらの帰宅に狂喜乱舞するあきらの母と双子の妹たちが簡単に想像でき、つくしは再開して初めてケタケタと子供のように笑った。

「ホテルも落ち着かないしな、帰ってくるのはたまにでも家があった方が便利なんだよ。」

潔癖症のあきららしいこだわりだ。

あきらは一人で帰れると固辞するつくしを無視し、美作の車でつくしの家まで送っていく。

「ここでいいから」

「少しでもお前といたいんだよ」

甘い顔で言われるとつくしも断れない。

二人は一緒に車を降りると、つくしが住むマンションの入り口を入り、エレベーターで4階に上がる。

入り口に鍵認証があるわけでもなく、防犯面で不安が残る作りだった。

つくしの部屋の前に着き、あきらは名残惜し気に「またな」とつくしの頭に軽いキスを落とす。

つくしは顔を真っ赤にしながらも、「また連絡するね」といい、鍵を玄関に差し込むと険しい顔になる。

「空いてる、、、」



明日最終話の更新です。

Who do you love? 4



あきらの言葉に、つくしはしばらく無言だった。

自分が口を挟む立場にいない事は分かっていたが、言わずにはいられなかった。

「なあ、牧野。あいつのことが好きなのか?」

あいつが、後藤のことを指しているのか、記憶をなくした司のことを指しているのか、もしくは両者を指しているのか問いかけたあきらにも定かではない。

やや間を開けた後、つくしは重い口を開く。

「なんで、どうして美作さんがそれを聞くの?」

「それは、、、」

「あたしには、彼みたいな人が丁度いいの」

あきらはかつて自分が言った言葉を思い出す。


『お前ならすぐにいい奴が見つかるよ。』


あれはつくしを諦めるため、自分に言い聞かせるために言った言葉だった。だが、一度発せられた言葉は足枷となり今もつくしを縛っている。

「そんなことない、あるはずないじゃないか。お前はもっと大切にされるべきだ。」

「なんでそんなこと、、、美作さんが言うの」

つくしの目は涙で揺れている。

心の底から湧き上がる気持ちを抑えきれず、あきらは腕をつくしへと伸ばすと強く抱きしめる。

「ごめん」

「なんで、、、今更、、、」

つくしは泣いているのか、声が湿っている。

「今更、、、だよな」

今更だ。

だが、つくしが腕の中にいるこの瞬間、もうごまかすことはできなかった。

「お前のこと、好きなんだ」

あさらは想いが伝わるようつくしを抱きしめる腕に力を入れる。

「ずっとずっと好きだった。俺はお前に相応しくないって思って距離を置いたけど、ダメだった。お前のことが好きなんだ。」

これまでに恋愛経験は積んできたはずだ。甘い言葉や手練手管なんてお手の物だった。でも本当に好きな人の前じゃそんなのまったく意味がなかった。

初めて恋に落ちた中学生のように、何度も「好きだ」と繰り返す。

しばらく動かなかったつくしが、弱い力であきらを押し返す。

「そんなこと今言われても、あたしには付き合ってる人がいるから、、、」

つくしの大きな瞳から流れ出る涙をあきらはそっと手で拭う。

「知ってる。お前が本当にそいつのことが好きだったら諦めるよ。でもそうじゃないんなら、絶対にお前のことを諦めない」

「そんな、、、」

「なあ、教えてくれ。これで聞くのは最後にする。お前はあいつのことが好きなのか?」

お前の心には一体誰がいるんだ。

かつて怖くて聞けなかった質問をとうとう口にする。

あきらには分かっていた。

これがつくしを手に入れる最後のチャンスだと。





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Who do you love? 3



何とか日本に出張する予定を調整し、久しぶりに東京に戻ったのは総二郎の電話から3日後のことだった。

その間つくしがら付き合っている男のことは気になっていたが、総二郎から送られた情報以外に調べることはせず、つくしの仕事が終わる時間を見計らって会社のロビーで待つことにする。

外部情報ではなく、先入観なくつくしの様子を知りたかった。たとえ総二郎がいうような男だったとしても、つくしが幸せなら自分の出る幕じゃない。

あきらがつくしの勤務する会社が入っているビルのロビーに入ると、途端にあたりが騒がしくなる。

普段なら決してブースから出ることのない受付嬢が携帯の自撮りモードで素早く化粧を確認すると、満面の笑みをたたえあきらのもとに近づいてきた。

「お客様、どなたとお待ち合わせでしょうか?」

「いや、アポはとってないのでここで待たせてもらえれば」

そう言っては見たものの、あたりは帰宅する女性達を中心に騒がしくなってしまい、このままつくしが出てくるのを待つもの難しいそうだった。

あきらは携帯を取り出すと、長く押すことのなかった番号をタップする。

プルルルル、、、8回目のコールが鳴り、発信を切ろうとしたところで、「もしもし」とつくしの小さな声が聞こえてくる。

「牧野、急にごめん。美作だけど」

「うん、久しぶりに美作さんからの着信でびっくりした」

久しぶりに聞くつくしの声と、つくしが未だに自分の番号を登録していた、その小さな事実だけでも喜びが隠せない。

「今お前どこにいる?」

「どこって、会社だけど。美作さんはまだロンドン?」

「いや、、、実はお前の会社のビルの下にいるんだけど、ちょっと人目を集めちゃってさ」

先ほどから増える一方の自分を見つめる女性たちから目をそらしながらあきらは申し訳なさそうに話す。

「えっ、うそっ!」

「いや、まじ。お前が降りてくるまで待ってようかと思ったんだけど、、、」

あきらが言い終わる前に、つくしの電話からはエレベーターが到着した音が聞こえる。そしてすぐにつくしがロビーに姿をあらわす。

「ほんとにいた。。。」

「急に悪いな」

先ほどまでの凛とした表情から打って変わって、満面の笑みでつくしに微笑みかけるあきらに、周囲から「きゃー!」と悲鳴があがる。

ここは女子校かよ。

「あたし、仕事終わるのあと1時間くらいかかるから、先にどこかのお店にいってもらってていい?」

ロビーの人だかりを見て、つくしはあきらに提案する。

「ん、その辺で時間潰してるから、終わったら連絡してくれ。久しぶりの日本で回るとこあるからゆっくりでいいからな」

そういうとあきらはつくしを見つめ、その様子を目に焼き付けたあとでロビーを離れた。

待たせていた車に乗ると、適当に皇居周りを流すよう指示した後でタブレットを見ながら仕事に取り掛かる。だが、頭の片隅には先ほど会ったばかりのつくしの姿がこびりついている。

贔屓目なしにいっても、つくしは美しくなった。だが、以前の太陽のようなエネルギーに満ち溢れた美しさではなく、陰のある美しさだ。

あきらは知っている。

魅力的だが決して手を出さなかった人妻達を。彼女達はなぜかロクでもない男達をすいよせる。あいつらは知っているのだ、自分が寄生できる女性を。決して彼女がやつらを拒めないことを。

やつらの嗅覚が発達しているからか、彼女たちの陰がやつらを呼び寄せるのか、どちらかなのかあきらにはわからない。ただ、先ほどのつくしに感じた陰に胸がはげしく騒つくのを感じだった。

つくしから連絡があったのはちょうど1時間後。車をつくしの会社近くに止めさせると、歩いてつくしと合流する。

もし良ければ飯食いにいかないか?、内心の不安を悟られないようあえて軽く誘うと、つくしはOKしてくれた。以前と同じように、「あたしでも払える店ならね」と条件付きで。

それならば、つくしが普段行っている店に行ってみたいとあきらが希望すると、美作さんの口には合わないと思うけど、、、と最初は渋りながらも二人で歩いて店に向かう。

隣り合わせに歩く二人の間は、以前よりもわずかに開いた気がするのは気のせいではないだろう。




時系列的にはここから第1話に戻ります。




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Who do you love? 2



それを見たのは総二郎だった。

つくしを雑踏の中で偶然見つけた。

だが何やら様子がおかしい。慌てて駆けつけると、側にいる男と揉めていた。

もう一軒くらい付き合えよ、明日朝早いから、つまんねーこと言ってんじゃねーよ一杯くらいいいだろ

男は苛立ちを隠そうともせず、次第に声も大きくなっていく。

つくしは顔をしかめ、よく見ると左手の肘のあたりを男に強く握られていた。

野次馬をかき分け側に駆け寄ろうとする総二郎に気がついたつくしが、静かに首を振る。総二郎は立ち止まりつくしの顔を見ると、つくしは再び首を振る。

近寄るなということか。

周りに人が集まっても気にしない男は、下手に総二郎が近づくと逆上しつくしに危害を加える可能性もある。

少し距離を置き、だがいつでも駆けつけられるところから総二郎は二人の様子を伺う。

男は「世話になってる先輩に挨拶くらいしろよ」だの、「俺の面子をつぶすつもりか」だの、つくしの「明日は早いから今日はもう帰らせて」という要求を全く飲み込む兆しがない。つくしは深くため息をつくと、「30分だけだから」といいしぶしぶ男の後ろをついて行きながら一瞬総二郎の方へ振り返ると、「ごめんね」と唇だけ動かした。

「俺のSPにその後も見張らせたんだが、結局牧野は深夜2時くらいまで付き合わせれて、酔っ払った男をタクシーで家まで送り届けて、自分の家に着いたのは3時をまわってたとさ。ちなみに翌朝6時に家をでたんだと。」

久しぶりの総二郎からの着信にいつもの馬鹿話かと何の心構えもなく電話にでたあきらは頭を真横から強く殴打されたかのような痛みを覚える。

「ちなみにまったく同じやりとりがこの1週間のうちにあと2回もあったらしいぜ」

「昨日な話じゃないのか、お前が牧野を見かけたのは?」

「たかだか1回の痴話喧嘩みたくらいで、ロンドンまで時差考えて電話するかよ」

総二郎はふんっと鼻で笑う。

「あいつは、牧野は大丈夫なのか?」

「今の話聞いて大丈夫だと思うか?少なくとも腕を強く握られて痣が残る程度には身体的にも負担がかかってるな」

その後、総二郎は「じゃあ伝えたからな」と電話を切った後でつくしが一緒にいた男の情報をメールで送ってきた。


後藤修二

つくしと同い年
つくしの前の会社の同期
二人とも転職した後で付き合いが始まったのが半年前

転職して仕事内容も待遇も改善し仕事にやりがいを感じているつくしとは対照的に、成果報酬の高さに惹かれて転職した後藤は思うように成果が上がらず、今の職場に不満をもち毎晩飲み歩くようになったと補足があった。

あきらは頭を抱える。

少なくとも、2年前までつくしの最も近くにいたのは、後藤でも、類でも、総二郎でもなく自分だった筈だ。

日に日に強くなるつくしへの思いと裏腹に、いつ司がつくしのことを思い出し迎えに来るのではないかという恐怖に身動きが取れなくなり、側に居られないと勝手に思いつめロンドンへと逃げてきた。


「お前ならすぐにいい奴が見つかるよ。」


突き放すような呪いの言葉を残して。




何とか今日も更新間に合いました。
誤字脱字すみません >_<


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Who do you love? あきつく 1



CPはあきら×つくしです。



どこにでもある大衆居酒屋、横に座ったつくしからタバコの残り香がたつ。

「これこれ、仕事終わりはやっぱりこれだよね!」

生ビールを一口飲み込み、美味しそうな顔をする。

「お前、おっさんみたいなこと言うなよ」

内心を悟られないように軽く突っ込むと、つくしも「女子に向かったおっさんってひどい!」とむくれた振りをする。

仕事終わり、サラリーマンが溢れる居酒屋でよく見られるやり取り。

「ホタルいかの一夜干しお待ちっ!」

頭にタオルを巻いた若い定員が元気よく皿をテーブルに置く。

「うーん、ビールにはこれだよねっ」

続いてするめの炙り、イカ明太、たこわさなどが次々にテーブルに置かれる。注文した当事者であるつくしは満足そうな顔をつくる。

3口目のビールに口をつけたつくしの肩がブルリと震える。

もう見てられない。

あきらはつくしの手からグラスを奪うと、残りを一口で飲み干す。少しぬるくなりビールの苦味が口に残る。

テーブルに置かれた伝票を取ると、反対の手でつくしの腕を掴む。

「出るぞ」

短く言うと席を立ち、財布からお札を一枚だすと「お釣りは取っておいて」と伝票とともに定員に渡す。

「なに、どうしたの?」

つくしの問いに返事せず、まだ店の近くに止まっていた車につくしを押し込む。

運転手に短く行き先を伝えると、あきらはシートに体を沈める。

「やっぱり、あたしが普段行ってるみたいな店じゃ気に入らなかった?」

違う、そんなんじゃない。

「ごめんね、気が利かなくて。やっぱりああいう店は美作さんには合わなかったよね」

つくしのお気にいりの店に連れて行ってくれる、それはなんだか特別な感じがして嬉しかったのだ。

車は静かに地下駐車場へと入っていく。

音もなく止まると、あきらの側のドアが外から開かれる。

あきらは運転手と一言二言話した後、つくし側のドアを開く。

つくしは戸惑うが、車内での重い沈黙が尾を引き、質問しかねていた。そのままあきらにエスコートされたまま、建物の中に入るとエレベーターへと乗り込む。

内装はまるでモダンなホテルのようだった。バーにでも行くのかと思いきや、案内されたのは最上階の一室。

「ここは、、、?」

戸惑うつくしをソファに座らせると、あきらはジャケットを脱ぎ、ドレスシャツのカフスを外して軽く腕をまくる。

そして部屋の真ん中にあるアイランドキッチンへと向かうと、冷蔵庫を開け手早くカクテルを作っていく。

その流れるような優雅な仕草に、気まずさも忘れてつくしはついつい見ほれてしまう。

シェイカーを振り、中身をグラスに入れると、今度は何やら冷蔵庫から取り出しお皿に綺麗に並べていく。

そしてつくしの前に薄いピンクのカクテルと、ハム、チーズ、クラッカー、オリーブが乗ったお皿が並べられる。

「とりあえず乾杯しようぜ」

あきらは長い沈黙を破ると、グラスをかかげる。

「乾杯」

あきらの声に合わせて、つくしも小さく乾杯と口にし、あきらのグラスにそっとグラスを合わせる。そしてグラスの中身をそっと口に含むと、甘そうな見た目とは裏腹にさっぱりとした柑橘系の爽やかな味が口中に広がる。

「このチーズにはちみつかけるとけっこーいけんだよ」

「えっ、チーズにはちみつってそれはないでしょ!」

「いや、まじだって。一回試してみろよ」

あきらの強い勧めにしぶしぶ口に運ぶとつくしの怪訝な顔は見る見る間にほころぶ。

「うそっ、美味しい!」

「だろっ!」

つくしの反応にあきらは満足げな顔をする。

「ついでに、ベタだけどメロンに生ハムのせてみるか?」

「いや、それは前に食べたことあるけど、やっぱり別々に食べた方がいいと思ったよ。なんかハムもメロンも両方とも冒涜してる気がする」

「まあ、お前の言ってることも分からないでもない」

先ほどまでの張り詰めた空気が嘘のように消えていく。

「さっきは悪かったな」

あきらの唐突な謝罪に、つくしは何を謝っているのか理解するのに数十秒を要した。

「いや、美作さんが謝るようなことは何もないから。あたしの方こそごめんね」

「おまえが謝ることはないんだよ。まじでさっきの店が気に入らなかったわけじゃないんだ。いつもおまえが行ってる店に行きたいって言ったのは俺だし」

先ほどのつくしが蘇る。

つくしは吸わないタバコの香りが残っていたこと、無理してビールを飲むこと、酒が好きな奴が頼むおつまみを注文したこと、その全ての様子につくしが無理をしているように思えたこと。

「お前に無理をさせるような奴とは別れろよ」

あきらの言葉につくしは目を見開らく。

「えっ、何のこと?」

「お前が今付き合ってる奴。お前の前でタバコ吸ったり、お前が好きじゃないビールを飲ませたり、あんな塩辛い料理ばかり頼む奴、お前のことを大事にしてるとは思えない」

つくしの目が揺れる。

「無理してるわけじゃないんだよ。ただ、相手の好きなものを知りたいってあたしが思っただけで」

「でもお前が我慢する必要はないんだよ。お前だけが。どちらか一方の犠牲のもとに成り立つ関係なんて付き合ってるって言えるのか?」

つくしは下唇を噛みしめる。

「お互いに歩み寄れるのが、相手のことをもっと知ることができるのが幸せなんじゃないのか?」

何も返すことができないつくしの目をあきらは優しく見つめる。

「俺はお前の好きなものは知ってるつもりだ。お前の好きな、さっぱりとしたでも可愛い色のカクテルも、しょっぱいだけじゃない酒のつまみも、がやがや騒がしいんじゃなくて落ち着いて話しながら飲むのが好きだってことも」

部屋に入っても着たままのジャケットの下の細い腕に痣があることもあきらは知っている。




いつも拍手、コメントありがとうございます。
なかなかお返事できませんが、いつも励みになってます。まずはこのお話を完結させたいと思います。


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Belated birthday



CP あきら×つくし です。





「どうせ俺はあいつらに比べれば影が薄いよ」

「ちがっ、違うんだよ、美作さん!」

つくしは慌てて手を大きく振り、全身であきらの言葉を否定しようとする。

「いや、気を使わなくていいんだよ、牧野。こういうの慣れてるからさ。むしろ俺の存在をこのタイミングででも思い出してもらっただけでありがたいっていうかさ、」

「もー、本当に違うんだって!忘れてたわけじゃないんだってば!」

つくしの顔は真っ赤で、明らかにあきらの反応にテンパっている。

「じぁあ、類の誕生日も終わったこのタイミングでどうして連絡してきたんだ?」

「いや、本当はもっと早く連絡したかったんだけど、、、」

「けど?」

「ほら、美作さんの誕生日前後は忙しいかと思って。その後でって思ってたらすぐバレンタインだったし、バレンタインも美作さん忙しいだろうとおもって、バレンタイン過ぎたらって思ったらすぐホワイトデーだし。きっと美作さんお返しとかで忙しいだろうって思ったらどんどん連絡するタイミング失っちゃって、、、」

つくしの声はどんどん小さくなっていく。

「それで?」

あまりにテンパっているため、あきらの問いかける声に笑いが含まれてい事にも気がつかない。

「もうほんとタイミング失っちゃった感があるし、いっそ来年まで待とうかとも思ったんだけど、、、」

「けど?」

「今朝の占いでね、迷ってることがあったらすぐに行動してみようって言ってて、ハッとして」

どの局か分からないが、普段ぼんやりとしたことしか言わない占いにあきらは心の中でお礼を言う。

「これ、遅くなったし、もう季節もあってないけど、良かったらワンちゃんお風呂あがりに拭くときにでも使ってもらえたらって、、、」

最後の方はほとんど独り言のように早口で言うと、つくしは足下を見たまま紙袋をあきらに差し出す。

「これって、俺にくれるの?」

つくしは引き続き足下から視線をそらさずに頷く。

「中見てみてもいい?」

再び頷く。

紙袋の中には、鮮やかなブルーの毛糸で編まれたマフラーが入っていた。

あきらは紙袋を脇に挟み、まるで宝物を広げるかのように丁重にマフラーを広げる。

鮮やかな色とは裏腹に、マフラーは軽く肌触りも柔らかい。

「カシミヤか?」

アパレルに強い美作商事の御曹司だけあり、触れただけで素材を言い当てるのは流石だ。

「そう、って言ってもあたしが買えるのだからそんないい物じゃないけど、、、」

綺麗に編まれているが、よく見ると所々網目が不均一な箇所がある。

「これ、もしかしてお前が編んでくれたのが?」

あきらの質問に、つくしは頭皮まで真っ赤になる。

「ごめんね、手編みとか重いかと思ったんだけど、別に深い意味はなくて、」

消え入りそうな声のつくしに、あきらの心は大きく震える。

このプレゼントはつくしが自分のために選んだ毛糸で時間をかけて編んでくれたもの。

どれほどの時間俺のことを考えてくれていたのだろう。

この世に一つしかない贈り物。

「気持ち悪かったら捨てていいから」

なにも言わないあきらの反応をネガティブなものだと思ったつくしはなんとか取り繕うとする。

「捨てるなんて、そんなこと出来る訳ねーじゃん」

そういうと、あきらはマフラーを首に巻く。

「すげー嬉しい」

美しい顔が本当に嬉しそうな顔に変わる。

プレゼントもさる事ながら、そこに込められたつくしの気持ちがなによりも嬉しかった。


これで期待するなってほうが無理だろ。


あきらはたまらず、下を向いたままのつくしを抱きしめた。

「なあ、今度このマフラーに似合うコートを仕立てたいから一緒に選んでくれないか?」

あきらの喜んでくれた反応に一安心したのもつかの間、急に抱きしめられてつくしは硬直する。

「コートって、今春になったばかりだよ」

「もう次の秋冬のコレクションは発表されてるからむしろ遅いほうだぞ」

本当はすでに秋冬のスーツもコートもオーダーし終わっているが、そんなことは微塵も感じさせないようにあきらは続ける。

「次の週末、空けといてくれるか?」

あきらの誘いにつくしは首をこくんと縦に動かす。

次の約束ができる、それは二人が新しい関係になった第一歩。


きっと誕生日にすんなりプレゼントを渡されたていたら、つくしはここまで素直に気持ちを口にしなかったただろう。


遅れて祝われる誕生日も悪くない。




あきらくんお誕生日おめでとうの話です。

あきつくを描きたくて始めた二次にも関わらず、気がつけば影が薄くなっていたあきらくん。誕生日忘れてたわけじゃないんだよー、でも遅くなってごめんね。


次こそはベタ甘なあきらくんを書きたいなーと思ってます。


ストックが全くないため、以前のように毎日は難しいですが、ゆっくりとマイペースに更新していこうと思います。


Riina


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ポラリス




例年より早く桜が開花したと世間が賑やかになったのを嘲笑うかのように、週末に吹雪く。

強風に煽られ散る花びらは雪とともに儚く消えていく。まるで、昨日咲き誇ったのが幻だったかのように。

顔に触れる冷たさが、雪なのか花びらなのか、目を閉じて立ち尽くすつくしには分からない。

いや、季節外れの北風の中長時間外にいるため、あまりの寒さのため感覚も麻痺し、頬に感じるものが冷たいのか温かいのかさえわからなくなっている。

まるで類みたい。

冷たいのか、優しいのか。

寒いのは好きなんだと、ゴワゴワしたコートを着ていたつくしに綿飴のようにふわふわで温かいマフラーをかけてくれた。

次にあった時に返そう。

でも、次が訪れることはなく、かといって捨てることもできず、マフラーは未だつくしのクローゼットの中にある。まるでつくしの類へのやり場のない気持ちのように所在なさげに、でもどこに隠しても隠し切れない存在感をともなって。


いや、類は優しかった。

誰よりも、つくしのことを大切にしてくれた。


だからこそ、類の気持ちにどう答えていいのか分からず、かといって類から離れられないつくしの気持ちを誰よりもわかっていたのだ。

おそらく、つくし以上に。

だからこそ、その優しさがつくしにとって重荷にならないように冷たい態度でカモフラージュしようとしてくれた。

限界まで。


「類…」


口から零れ落ちた名前は風に吹かれてあっという間に遠ざかった。

久しぶりに類の近況を知った。

彼の地で、美しい女性と寄り添う姿は、まるで最初から神に定められた運命のような絶対感があった。

誰も割り入ることなんて出来ない。

そう、私はただの後輩Aで、最初からこの物語の結末は決まっていたのだ。でも、それでも、彼の物語のわずかなページに載るとこができただけでも幸運だったのだろう。本来なら、けっしてあたしなんかが関われるような人じゃないんだから。

どんなことを思っても、どんなに自分を納得させようとしても、その視界は溢れる涙でぼやけたままだ。

ああ、あたしはこれからどこに進めばいいのか。


類はあたしの羅針盤だった。


暗い海の中船乗りたちを導く北極星のように、
たとえ離れていても、会えなくても、類の存在があったから歩き続けられた。


そんなことに今更気がつくなんて。


誰かのものになった途端寂しさを感じるなんてなんてさもしいのだろう。最初からあたしのものなんかじゃなかった。あたしが釣り合う人じゃなかった。なのに、きっとどこかで信じてたんだ、類の気持ちは変わらないって。


あたしの気持ちだって変わった。


あんなに大好きだった道明寺があたしのことを忘れても、あたしは毎日を淡々と生きている。そして今は別の人を思って涙を流している。どうして類だけが違うと思ってたんだろう。

泣いている自分すら滑稽に思え、つくしは自分の顔を二度強く叩く。

あたしに泣く権利はない。かつて彼がやってくれたように、今度はあたしが彼の幸せを祈ろう。類が幸せなら、あたしが側にいれなくてもいい。たとえ自分以外の人の横で笑っていても。


日が落ちるとともに雨は上がり、雲の隙間から星が見える。


「また星みてるの」


物思いに耽っていたため、自分以外の人がいることに気がつかなかったつくしは驚きのあまり肩をすくめる。

「ここにいると風邪ひくよ」

背中に温もりを感じるとともに、握られた両手がつくしのお腹の前に現れる。

「マフラー、あんたに渡したままだからさ」

どうして…

長く寒空の下にいたせいで、口がかじかんで音がでない。

「そろそろ、限界かなって思って」

記憶にあるよりも、幾分低い声が時の流れを物語る。

「ねえ、なんかないの、久しぶりに俺にあって」

「な、、、なん、、、なんで、、、なんっ、、、」

「ふふっ、壊れたラジオみたいになってるよ。

なんで俺がここにいるのかって?」

つくしはコックリと頷く。

「牧野がここにいるって聞いたから」

「なんっ、、、なんっ、、、なんで、、、」

「ねえ、そのままでいいから、俺の質問にYesだったら頷いて、Noだったら首を振って。

俺のこと、覚えてる?」

つくしは頷く。

忘れるはずがない。

「よかった、忘れられてなくて。じゃあさ、俺がいない間、元気にしてた?」

小さく頷く。

「うそだ。後ろから見てもガリガリなのがわかるよ。また働きづくめで無理してたんじゃない?」

動いてないと、一度でも立ち止まってしまえば二度と動けなくなる気がして怖かった。

「ねえ、俺のこと考えてくれたことはある?」

つくしはやや間を置いたあと、頷く。

「俺はさ、あんたのこともう考えるのはやめようと思ったんだ」

類の思いがけない言葉につくしの胸に鈍い悲しみが広がっていく。もっともだ、あたしはずっと苦しんでいる類の気持ちをずっと無視してきた、鈍感な振りをしながら。「ソールメイト」なんていう都合ないい言葉を使って、ずっと傷つけてきた。


「あんたは情に厚いから、きっとすぐに心を寄せる奴が出来るんじゃないかって。だからさ、誰かの隣にいる牧野のことを考えないようにしようって、そう自分に言い聞かせてきたんだ。」

類は自虐的に笑う。

「そんなのできるわけなかったんだけどさ。気がつけば、いつもあんたのこと考えてた。そんな分かりきったことすら分からなかったみたい、あの時の俺は」

後悔の念に潰されそうになっていたつくしは、類が何を話しているのか理解できなかった。

「うぇい?」

「あいつから写真が送られてきたんだ」

「へ、写真って?」

「あんたの隣に誰もいなかったから、笑ってなかったから。俺が行かなきゃって」

つくしは訳がわからず類の顔を見ようとするが、後ろから回された腕で振り返れない。

「俺はさ、やっぱりあんたには笑っていて欲しいんだ。」

つくしが見たのは、類が静と寄り添う写真だった。

高校時代に見た寄り添う二人を思い出した。つくしには入る余地もないと圧倒的な絶望感に打ちひしがれたあの頃のままの二人だった。

つくしは混乱する。一体類は何を言っているの。類の横には静さんがいるんじゃないの。


「何も望まないからさ、また牧野の近くにいてもいいかな?」

少し震えた類の声を何度も反芻する。

もしかしたら、あたしは悲しみのあまりおかしくなってしまったのかもしれない。

それでも、たとえ幻でもいい。もう一度類に触れられるんだったら。

「あたしも、もし類が許してくれるんだったら、類の側にいたい」


類の腕から力が抜け、つくしはゆっくりと後ろを振り向く。


ああ、なんて美しいの。

つくしが恐々と類に腕を伸ばそうとすると、その体は力強く抱き寄せられた。

「うん、ずっと側にいてよ。牧野が俺のこと嫌になるまで」

そんな日は永遠に訪れるわけがない。

夜空に北斗星が輝く限り。



ポラリス: 北斗星

三浦しおん先生の短編集、「君はポラリス」の話がとても静かで綺麗なので、そんなお話にしたかったのですがなかなか難しく。。。

テーマは工藤しずかの『慟哭』でした。類誕なのでハッピーエンドにしましたが。この曲、学生時代誰かが失恋したらいつもカラオケでみんなで熱唱した思い出の曲です。切なくていいんですよね。

つくしの幸せを願ってやまない人々が裏でなんやかんややったのは、類とつくしには内緒です(類は気づいてそうですが)。